省エネの町
昨年10月、NPO法人おぢや元気プロジェクトが取り組んでいる「よりみち大学」で視察研修に岩手県葛巻町に行った。小千谷市からはかなり遠い。9人乗りのワンボックスカーで、待ち合わせをした葛巻高原牧場に着くと、鈴木重男町長が笑顔で出迎えてくれた。その日は晴天で、さわやかな風が吹き渡っていた。
町長は「すみません、キーを貸してください」と、自ら私たちの車を運転して町の隅から隅まで案内してくれた。小高い高原がいくつも重なりあって牧場になっている。中心商店街は山間に寄り合うように細長い街並みをつくっており、平地が極めて少ない。人口は約9千人、牛が1万2千頭。人口よりも牛の数のほうが多い。驚くことに、この町は約30年前から徹底的にクリーンエネルギー・省エネルギーに取り組んでいる。
風力発電や太陽光発電はもちろん、地熱発電、木質バイオマス発電、家畜の糞尿を分解してガスを取り出し発電する畜産バイオマス発電をすでに実践している。そして町の産業である牧畜や牛乳、チーズ、ワインなど葛巻ブランドの商品がずらりとある。中でも風力発電はかなりの利益を上げているという。そんな町を参考にしようと年間何万人も訪れる。
まさに人・自然・経済のサイクルが歯車のようにうまくかみ合っている。初めて行った私たちには宝の町のように見えた。町長は「ここは何もない町だから先人が知恵を出して、人から人へと受け継がれて今日に至っている」と言った。
この町をこよなく愛しているという気持ちが、ひしひしと伝わってきた。
一年中寒くて風が強くて、平地が少ない。あるのは山に自生する山ブドウくらいだという。マイナスと思われる条件を、地域の特質を生かしたプラスの発想に転換している。約30年前に、100年後の地域のあり方について住民が夢を語り合った中から生まれたまちづくりだった。
町長も3代目なったが、同じ方向性を保ち、計画は70年後の夢に向かって着実に前に進んでいる。人類が抱える自然環境や低炭素社会、新エネルギーなどの課題と経済問題の解決、そして世界が進めているグリーンニューディールの糸口が見えてきそうだ。「よりみち大学」が取り組んでいる次世代型中山間地農業プランの中にも、新エネルギーの利活用を進めていきたいと考えている。
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