鷹柱
なんということだ。一本の上昇気流の中にところせましと、こんなにもたくさんのワシ、タカが詰まって昇る姿を今まで見たことがない。
数年前、9月のある晴れた日の朝、ワシ、タカの渡りを観察するために標高約336メートルの高原、小千谷市の山本山の山頂にいた。
日本でも三本の指に数えられるワシ、タカの渡り観察の名所なのだ。遠くは北海道や東京や日本全国から山本山に観察に訪れる。
毎年9月の中旬から11月ごろまで晴れていれば毎日観察ができる。時間帯は午前9時ごろから11時ごろまでの2時間くらいだ。
日本各地で渡りを見ることは可能だが、羽を休めているワシ、タカが飛び立つ姿を背中ごしから見下ろすことができ、車でのアクセスが良い場所はほかにはないという。越後川口インターで降りて山本山山頂までは車で約5分だ。
上昇気流に乗って悠々と高く昇っていく様子と、さまざまな種類の野鳥の姿を観察できる。ノスリ、サシバ、ミサゴ、ハチクマ、ツミなどそのほか数十種類もある。双眼鏡で覗き込むと美しい羽一本一本が鮮明で、まるで目の前スレスレに昇っていくように見える。手を伸ばせば届きそうな迫力だ。
蛇行する信濃川から吹き上げてくる強い風を頬に感じながら見上げた空には、まるで紙飛行機が勢いよく飛ぶように次々と小さな黒い点になって南下して消えていくワシ、タカの姿があった。
私の目の前には1本の上昇気流に乗って62羽ものワシ、タカが旋回しながら飛んでいた、縦に一本の黒い柱のようになっている。それを薦柱と呼ぶ。
62羽のワシ、タカがおよそ千メートル上空まで昇りつめたかと思うと、急に今度は南の空に向かって一直線に飛んでいくのだ。その日は300羽以上のワシ、タカが南の空に吸い込まれていった。
一度はぜひ山本山山頂までワシ、タカの渡り観察にお出かけください。
ちょうどこの週末、19日土曜午前9時から、県長岡地域振興局の主催で観察会が行われます。専門家の方に詳しい説明を受けながら見聞を広め、食物連鎖の最高峰である猛禽類ワシ、タカの渡りから環境を考えるのも良い機会ではないでしょうか。私も参加予定です。
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